新婚生活を支えたくれた愛犬モモ VOL.35
犬は家族という群れの中で「この人」という一人を決めて忠誠を誓い、どんな時も天使のように寄り添って生きてくれる存在だと私は思っています。
モモにとっての「この人」は私でした。
モモが11歳の時、私は40歳で結婚をしました。
それから、寂しがり屋の私の傍らには、いつも優しい夫が寄り添ってくれるようになりました。
夫は結婚した時、45歳。
お互いに自由な一人暮らしが長く、環境の急変で繊細な夫はストレスで一時体調を崩してしまいました。
お見合いで出会ってから3ヶ月程度で結婚してしまったので、新婚生活は波乱が多く、精神的にもアップダウンを繰り返しました。
全てカミングアウトはできませんが、思いがけないことが起こったりして、色んなことを乗り越えました。
私の人生はどこへ運ばれていくのだろう・・・と心もとなさを感じたものです。
人生で初めて「委ねて生きるしかない」といった状況だったように思います。
でも、孤独を感じることだけは一切無くなり、なんだかんだでとても幸せな新婚生活でした。
その事を家族皆、喜んでくれましたが、ひと言も言葉を発せずに、心底喜び、共に幸せになったのは、愛するモモでした。
でも一つ心残りは、モモを結婚式に呼ばなかったことです。
軽井沢の教会で式を挙げたのですが、今思えば、何とかしてモモを結婚式に参列させる方法を真剣に考えれば良かったです。
孤独な時間が長く、お留守番も慣れっこだったモモは、家に残り、遠くから祝福してくれていたんだろうと思います。
そんなことも想像すらできず、私は浮かれていたのかもしれません。
夫は子供の頃、盲導犬の訓練士になりたいと思っていたそうで、犬や動物が大好きな人です。
モモはそんな優しい夫の本質を見抜き、最初から安心しきって甘えていました。
私と父の中が良くなり、家の中に流れる空気が明るく一変しました。
モモの表情はどんどん柔らかく、明るくなり、安堵してリラックスしているようでした。
マンションで二人暮らしの私たちは、休日には、実家へ頻繁にモモの顔を見に立ち寄ることが多くなり、ドライブや散歩に連れ出す事も多くなりました。
親戚や家族が集まりお庭で賑やかに流しそうめんパーティーをしたある夏の日、まだ新しい環境に慣れず、ナイーブになっている夫にモモはピッタリ寄り添って甘えていました。
夫はピッタリ身体を委ねて寄り添ってくれたモモの温もりを一生忘れないと今でも言っています。
今まで寂しい想いを一杯したから、夫の気持ちを敏感に受け取り、精一杯慰めて励ましていたのかもしれんせん。
いつの間にか年上になってしまったモモ。仔犬の頃から側に居るのに、私よりも成熟した老犬になって、優しく家族の幸せを見守っている神様のような存在になっていたんだね。